はじめに
スーパーボールを飲み込んでしまったワンちゃんを内視鏡で治療する機会がありましたのでご紹介させて頂きます。
スーパーボールを誤飲したワンちゃんを治療したのが当院で初めてで(笑)
診断上考えていたことと異なることが起こり、私自身勉強になりました。身近にあるスーパーボールの誤飲・・・
お宅のワンちゃんは大丈夫??
今回の患者さん
ミニチュアダックスの5歳の男の子のワンちゃんです。
このワンちゃんは嘔吐を主訴に来院しました。以前より嘔吐の症状が(時折)認められたとのことです。ぐったりしている様子はなく、比較的元気はありました。
そこで、嘔吐の原因を探るべく、検査を行ったのです。
レントゲン検査
胃の中にガスが認められました。そのガスが不自然に丸い形をしているのです。(写真1)不自然なガスはピンク色の矢印で示しています。
写真1(No.2888)
同部位の拡大写真です。(写真2)やはり真ん丸のガスの陰影が見られます。体位を変えて繰り返しレントゲン撮影しましたが、同じ形のものが写っていました。なんか変です。通常、異物の場合はレントゲンが通りにくいので、周辺の臓器の色と比較して白く写ってくることが多いのです。
写真2(No.2887)
腹部超音波検査
エコー検査により、胃の中を観察しました。(写真3)
真ん丸の物体が確認されました。不自然なガスの陰影は異物の可能性が極めて高くそれも球体であることが判明しました。大きさは25mm程度のものです。
この時点でひょっとしてスーパーボール??という疑いを持ちました。
写真3(No.0001)
この後で、胃の中に異物が入っており、それがもとで嘔吐を引き起こしている可能性が非常に高いと判断して、上部消化管内視鏡検査を実施しました。
上部消化管内視鏡検査
上部消化管内視鏡検査を行いますとすぐにその異物が確認出来ました。色は黄土色で丸い形をしていました。やはり球形の物体です。スーパーボールの可能性が高いです。(写真4)
写真4(No.1616)
これを内視鏡により摘出を試みました。
バスケット鉗子と言う針金で包み込むことのできる道具です。ただし球体の摘出は困難を極めますので、開腹手術の可能性もありました。
写真は実際に鉗子で把持出来たときの写真です。(写真5)この状況となるのに何度も何度もトライしてようやくつかんだところです。
(球体はきちんと把持しないと滑ってしまうのです。また胃内の粘液により把持した異物が大変滑り易いのです。)
でも幸運にもがっちりとGETです。
写真5(No.1619)
実際に摘出したときにはこんな状態です。(写真6)
写真6(No.2884)
大きさはこんな感じです。(写真7)
写真7(No.2882)
幸運にも摘出出来ましたが、とれない場合は胃切開です・・・
ボールの拡大写真を見ますと、一部に咬んだあとのような傷が・・・(写真8)
この傷の部分に、鉗子が引っかかって摘出出来たのかもしれません。
処置は無事に終了し、翌日には元気に退院致しました。
写真8(No.2885)
最後に
スーパーボールを誤飲したワンちゃんの治療を紹介させて頂きました。
スーパーボールの誤飲は比較的多く見られるようで、飼い主さんが気がつかないうちに誤飲しているケースが多いと思います。
また誤飲してからもしばらくの間は無症状だったり、軽い嘔吐の症状で長期間経過することが多い様です。
レントゲン検査ではスーパーボールは空気のように黒く抜けて見えることもありますから、レントゲンの読影には注意が必要だと思いました。