2.手術と経過
試験開腹術 1
触知できた腫瘤塊は穿孔を起こし腫大した回腸の一部と腸間膜が癒着して形成されたものだった。(黄矢印)
癒着した腸間膜を穿孔部位から少しずつ分離し穿孔部位が一部現れたところ。(赤矢印)
試験開腹術 2
穿孔部位には約1cm程度の毛球と3mm角程度の医療用テープが認められた。穿孔部分は回腸の1/2以上に及んでいた。
穿孔を起こし腫大していた部位を切除後、回腸の端端吻
病理組織所見 1(摘出した回腸の一部)
穿孔部付近では壊死と好中球を中心とした多量の細胞浸潤。
筋層に該当する部位もわずかに平滑筋線維が残存する程度。
リンパ球を中心とした細胞浸潤。
病理組織所見 2(摘出した回腸の一部)
穿孔部を少し離れた部位では粘膜固有層、粘膜下組織に多量の好酸球浸潤。
筋層へのリンパ球、形質細胞、好中球浸潤。
平滑筋層の部分的脱落。
病理組織診断
好酸球性腸炎を持つ回腸穿孔による腹膜炎。
治療と経過 1
- 術後5日よりヒルズa/d缶給餌。8日目より自発的に採食。
- 8日目よりプレドニゾロン3mg/kg sid、タイロシン、アモキシシリン、乳酸菌製剤の投与開始。
- プレドニゾロンは以後斬減。0.5〜1mg/kg sidで維持。
- ヒルズz/dの給餌。
治療と経過 2
- 治療中は体重が増加し良好な状態を維持。
- 治療開始5ヵ月後、オーナーより食事と投薬の継続が困難との話があり治療をいったん中止。
- そのまま経過観察。
- 治療休止2ヵ月後に内視鏡検査を提案。
上部消化管内視鏡検査
- 内視鏡像
食道、胃では特に異常所見は確認されず。 - 病理組織所見
表層ならびに腺の陥凹部にヘリコバクターと思われる螺旋状の微生物が各所で観察される。
- 内視鏡像
十二指腸は粘膜の軽度の凹凸が観察された。 - 病理組織所見
特別な変化なし。
治療と経過 3
治療休止して3ヶ月後に食欲廃絶・削痩を示し来院。(体重3.5kg→2.7kg)
投薬再開(プレドニゾロン、タイロシン、アモキシシリン、乳酸菌製剤)
投薬により病状の改善が認められた。オーナーに投薬の継続を強く指示している。