はじめに
自宅で遊んでいて、急に足を痛がりはじめた。左の後ろ足が着くことができなくなった。
ということで来院されました。
今回の患者さま
とっても可愛いトイ・プードルの6ヵ月齢の男の子です。
突然の左の後肢の跛行を主訴に来院されました。
痛みが強いようで膝を中心に腫れを認め、診察室内でも負重が出来ない状態でした。
レントゲン検査
写真1
レントゲン写真を拝見したところ、左の脛骨粗面の剥離を疑う所見を得ました。
そこで、比較対症に反対側の膝を中心にレントゲン撮影を行いました。
写真2
反対側のレントゲン写真と比較しますと、やはり、脛骨粗面の分離を疑います。
一旦このまま包帯を施し、数日経過を観察しましょう!ということで“ロバートジョーンズ包帯”という方法で、膝を動かさないように固定するように致しました。
しかしながら2日後のレントゲン写真では、脛骨粗面の分離が更に進んでしまい、 包帯による外部からの固定では治癒が期待できないという結果になりました。
写真3
結果としましては外科手術により剥離した脛骨粗面を固定する手術を計画しました。
図
簡単に説明しますと、骨折した骨を元通りに整復してその状態で、キルシュナー鋼線という硬い手術用の針金で固定する手術になります。
手術後
手術後の写真が以下のものになります。
2本の鋼線により骨折部分が固定されているのが確認できます。
写真4
この後は、再度ロバートジョーンズ包帯を施し、しばらくの間は膝が過度に曲がらないように固定するのですが、この、ワンちゃんは、前回のロバートジョーンズ包帯により足が拘縮気味になっていたので、長期間包帯すると、その後の筋肉の拘縮が起こる危険性が予測されたので病院内でゲージレストとし、十分な運動制限を行いました。
その後の経過
写真5
写真では、骨折部分がしっかりと骨化しているので、大変順調に治っています。
最後に
この骨折(脛骨粗面の分離)は成長期のワンちゃんに見られるものです。
剥離してしまった脛骨粗面は、膝の靭帯に着いていますからそのままでは、治りません。
部分的な剥離であれば、保存的な治療で治癒することもあるそうです。
しかしながら、ほとんどの症例では、完全な剥離を呈してしまい外科手術の対象となることが多いと考えられます。